スペーシャリスト メールマガジン バックナンバー

タイトル:スペーシャリスト会報 Vol.222 発行日時:2025年6月16日


┏ Magazine from Spatialist Club ━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
2025(R7)年6月16日(月))
◇ スペーシャリスト メールマガジン ◇  vol.222
                    発行元:スペーシャリストMM事務局
                    https://spatialist.sakura.ne.jp

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*ニュースラウンジ              名草一成
*リレーエッセイ<空間連携>         駒井拓也
*新入会員のページ              本川淳平、藤井孝文
*空間情報関連/書籍紹介           大山容一
*企画委員会 議事録(抄)
*人財育成懇談会 議事録(抄)
*日本測量協会・SPの会 事務局からのお知らせ 遠藤拓郎
*編集後記                  近藤弘崇

■ニュースラウンジ
 既に標高改定から2カ月が経過しました。この改定は標高を求める仕組みに関わる大
きな改革を伴っており、その対応に奔走されている方も多いのではないでしょうか。
一方で、約1年前から国土地理院がホームページや各種説明会を通じて丁寧な周知を行
ってきたこともあり、現場への浸透は比較的スムーズに進んでいるように感じます。
 さて、6月3日に開催された「測量の日」記念フェア2025・第27回近畿地方測量技術発
表会においても、国土地理院から標高改定に関する発表が行われました。私も2番目の
発表者として登壇し、「阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)から30年」と題して、明石
海峡大橋やGEONET(GPS連続観測システム)に関わる歴史について紹介させていただき
ました。ここでは、その概要を簡単にご紹介いたします。
 1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災(震度7、マグニチュード7.3)では、私は
当時、明石海峡大橋のメインケーブル架設工事に携わっており、地震直後には構造物の
変位計測を実施し、工事再開に向けて奔走しました。あの震災から30年が経ち、測量技
術は飛躍的な進化と多品種化を遂げました。1995年はWindows 95の登場をはじめとして、
インターネットの普及が始まり、B5判ノートPCが市場に現れ、GPS衛星が一般向けに開放
されるなど、技術革新が一気に進んだ年でもあります。その後、1996年にGEONETが運用
を開始し、1997年には初の全国数値ジオイドモデル「GSIGEO97」が公開されました。20
01年には日本の測地系が世界測地系(JGD2000)へと移行し、2004年にはGEONETの全国
ネットワークが整備されました。そして本年2025年には「ジオイド2024日本とその周辺」
が公開され、新たな標高値の提供が始まっています。こうした技術の進展により、リア
ルタイムでの斜面変動計測、航空レーザやUAVレーザ、さらにはMMS(モバイルマッピン
グシステム)による高精度な地形・路面把握が可能になりました。加えて、小型かつ低
価格な計測機器も普及し、計測環境は大きく変わりつつあります。また、1995年の震災
を契機に、建築物の耐震基準の見直しやライフラインの地中インフラ(ガス・水道・電
力など)の耐震化が一気に進みました。
復興を見据えたまちづくりも推進され、それに伴ってGISの普及が加速しました。「ボラ
ンティア元年」とも呼ばれたこの年をきっかけに、日本の食料安全保障体制の強化として
備蓄米制度も始まりました。しかし、昨年発生した能登半島の災害では、30年前と同様の
被害が見受けられ、「いまだに想定外なのか」と強い憤りを覚えた方も多かったのではな
いでしょうか。
 このように、技術が進歩し、多品種化・自動化が進む一方で、得られたデータの精度や
品質については、利用者自身が判断する場面が増えてきています。私たち空間情報の専門
技術者には、これらの計測結果を正しく評価し、適切な活用方法を提案できる“コンサル
ティング力”が、これまで以上に強く求められていると実感しています。
                         (名草一成:国際航業株式会社)

○令和7年7月号の担当は、中舎 哉さんです。

■リレーエッセイ<空間連携>
住田専務理事からバトンを引き継ぎましたパスコの駒井です。
私は、現在の所属にて空間情報を活用した事業提案や空間情報を扱うクラウドサービスの
導入提案等を担当しています。
皆さまは、大阪万博に行かれましたでしょうか。私は東北在住という地理的な要因もあり、
行きたくてもまだ行けてない人間の一人ですが、YouTubeの多くのチャンネルで「オスス
メ」等の動画が紹介されており、かなり子細に各パビリオンで様々な思考を凝らした展示
が行われていることを知ることができます。あくまでも動画視聴の個人的な見解となりま
すが、人気パビリオンに共通する“ある特徴”があって、それは『没入感』の提供です。
また、場所は変わり、おなじみの東京ディスニーシーでも世界中の名所や大自然を巡る空
の旅を専用の乗り物と映像コンテンツにより『没入感』を味わうことができる「ソアリン」
が人気アトラクションの一つとなっています。
近年、3次元地形データや3D都市モデルなどのコンテンツを活用した災害対策や暮らしやす
いまちづくりなどを支援する都市のDXの提案を行っていますが、モデルデータの構築やソ
フトウェアの提供による可視化に加え、より高い視認性や再現性を提供するため、VRゴー
グルなどのデバイスの活用も行っております。初めてVRゴーグルを介して自社で構築した
仮想空間を体現した『没入感』は、何物にも代えがたい感動と衝撃がございました。
話は戻り、万博(国際博覧会)とは『世界中からたくさんの人やモノが集まるイベントで、
地球規模のさまざまな課題に取り組むために、世界各地から英知が集まる場』と定義され
ているそうですが、我々空間情報事業者もわかりやすく、伝わりやすい、時には『没入感』
を提供するサービスを通じて、求められる社会課題の解決の一躍を担えればと考えますし、
日々の業務に『没入』しすぎないよう、タイミングが合えば、大阪万博の人気パビリオン
で『没入感』を体験して参りたいと考えております。
(駒井拓也:株式会社パスコ)

〇次回令和7年7月号は、ナカノアイシステムの伊倉正芳さんにバトンをつなぎます。

■新入会員のページ
 スペーシャリストの会に入会しました、株式会社パスコの本川と申します。私は入社以
来、固定資産税分野の地理空間情報業務に携わって参りました。固定資産税の課税庁であ
る市町村の顧客向けに、支援業務を担当し、固定資産GIS、土地評価コンサルティング、
地番図・家屋図整備更新など、様々な関連業務を行っております。
固定資産税分野の地理空間情報業務においても、従来の測量・地図データ調製から、3Dや
AIまで、幅広い技術が関連しています。見方を変えれば、私たち固定資産税分野の技術者
自身が、これらの技術をある意味では「活用」して業務を展開する立場でもあり、各分野
の地理空間情報技術者の成果の上に成り立っていることを実感させられています。
最近は地理空間情報技術が進展する中で、技術の長所・短所・費用対効果等を整理し、自
治体にとって最適解となる支援業務をコーディネートすることが一層求められております。
こうした中、私自身もスペーシャリストの会を通じて技術や知見を深め、精進していきた
いと考えています。今後とも、どうか宜しくお願い致します。
(本川淳平:株式会社パスコ)

はじめまして。このたび空間情報総括監理技術者の資格を取得し、スペーシャリストの
会に入会させていただきました、大日コンサルタント株式会社の藤井孝文と申します。
これまで、河川・砂防や道路防災分野を中心に、災害リスクの分析・評価から対策設計に
至るまで、防災に関わる業務に携わってまいりました。近年は、自然災害の激甚化やイン
フラの老朽化といった社会課題が顕在化する中、災害対応の現場で空間情報技術の重要性
を強く実感しております。現在も、地形や気象など多様な空間情報を活用し、シミュレー
ションやBIM/CIMを通じて、現場の課題解決に貢献できるよう日々努めております。
本資格への挑戦は、自身の知識や技術を見つめ直す貴重な機会となりました。今後は、本
会での学びや交流の機会を大切にし、会員の皆さまから多くを学びながら共に成長してい
きたいと考えております。また、本会の活動に微力ながら貢献し、皆さまとともに課題解
決や次世代技術者の育成にも寄与できれば幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
(藤井孝文:大日コンサルタント株式会社)

〇令和7年7月号の担当は、佐田一徹さん、東出 唯さんです。

■空間情報関連/書籍紹介
書名  フクシマ、能登、そしてこれから
     ―――震災後を生きる13人の物語
著者   藍原寛子 Aihara Hiroko
出版社  婦人之友社
発行日  2025.3.11
ISBN:   978-4-8292-1074-1

 遠隔地に出張の折りにはちょっと大きな書店に入り、その地方でしか売っていない本を
探すことにしています。数年前の仕事の落とし前をつけに来た3月末日、福島駅前で見つ
けたのが本書です。

 東日本大震災から14年、各地の都市機能は完全に復興し、新しい街が活動を続けてい
る中、原発事故の周辺、福島県浜通りでは状況は全く改善していません。ひとすくいのデ
ブリすら処置できていない。一見、皆の生活が元に戻っているため、日本社会全体の空気
は、あろうことか原発の再稼働を容認しているようなありさまです。
 そんな中、能登半島を巨大地震と津波、そして夏の豪雨が襲いました。ここでは、志賀
原発が地震によるトラブルがあいつぎながら、発表の遅れや内容の訂正を繰り返すなど
フクシマの教訓が生かさせていません。他方、かつて半島先端の珠洲市で原発誘致の動き
があったものの、住民運動を展開して白紙撤回させた経緯があり、もしも原発が稼働され
ていたらと思うとゾッとする地域でもありました。
 フクシマと能登で、復旧と復興に懸命に生きる13人のドキュメンタリーが綴られてい
ます。「今」を「よりよい未来」へとつないでいこうとする姿を読み取ることができます。
私たちの業界も、被災直後の現況把握、復旧・復興への多方面の協力、除染事業への参画
と、業務として両災害に深く関わってきましたが、生活者としての観点を、あらためて見
直す機会となりました。

 参考までに添付の写真は、原発誘致を逃れた珠洲市の現在のようすです。公道の道路啓
開作業は終了しているものの、1cmでも民地に入ると、一片の材木すらかたづけられては
いません。1年半このまま。私有財産制社会はこのような時には足枷となって。
 13人のうちのひとり、歌人 砂山信一氏の詠んだ一首を、最後に掲げておきます。
   我が想いと同じ記事なり 珠洲原発 できず良かったとエッセイスト書く
(詩集『珠洲の海』より)
思うに、原子力技術とは、現代の人類にはまだ早すぎるんだと。
(大山 容一:国際航業㈱)

令和7年7月号の担当は、大伴 真吾さんです。

■令和6年度 第4回「スペーシャリストの会」企画委員会(令和7年5月)議事録(抄)
開催日時・場所:令和7年5月19日(月)13:30~15:30、日本測量協会 第1会議室・WEB
(1)報告事項
 ①各支部活動報告(※隔月掲載)
 ②第8回人財育成懇談会議事録抄(※4月号掲載)
 ③第8回最新技術動向の調査活動研究会議事録抄(※5月号掲載)
  次回、6/16(月)16時~17時、SPの会会員限定で視聴可能。
  テーマ・講演者:低軌道衛星測位について・株式会社アークエッジ・スペース
 ④2025 年イノベーション大会進捗報告
  日時:令和7年6月17日(火)15:00~17:00
  場所:東京大学伊藤国際学術研究センター ギャラリー1
  司会:アジア航測 小林雅弘氏
  テーマ:測量の未来を語る
  1.月と空間情報 朝日航洋 秋山幸秀氏
  2.私が語る点群データを活用したARの未来 朝日航洋 白井正孝氏
  3.測量業界のサプライチェーンの未来 アカサカテック 安藤港増氏
  4.私が考える測量の未来 -SURVEY NEXT FUTURE- アジア航測 佐田一徹氏
 ⑤令和7 年KIT 空間情報セミナー講演者報告
(2) 討議事項・要請事項
 ①月刊「測量」スペーシャリストの会コーナーの執筆毎号の確認(第36弾)
 ②2025 年スペーシャリストの会全国大会(空間情報未来会議)について
  日時、開催方式、講演者について検討中、開催時期は10月下旬から11月上旬を予定
(3)次回予定
  第5回企画委員会 令和7年7月18日(金)13:30~15:30 日本測量協会 会議室・WEB

■第9回 測量技術者のための人財育成懇談会(2025年5月)議事録(抄)
日時:2025年5月26日(月)15:00~17:00
場所:日本測量協会 第2会議室、WEB
 ・議題テーマ:「技術者の学び直しとその現状」および今後のとりまとめに向けて
1.技術者の学び直しとその現状
 ・学び直し実施機関、カリキュラム、学費等について、各自が調査した結果を「教育研修
  機関_総括表」を基に報告。
2.次回以降のテーマ:「世代層別の人材育成(案)の検討」
 ・マイノートにおいて「若手層、中堅層、ベテラン層、シニア層①、②」の世代ごとに、
  「①本来の役割・期待」「②現状の課題」「③理想的な姿をめざして」の各項目につ
  いて共通認識を見出す。
  各項目について、3名ずつのグループに分けて、グループ内で取りまとめた内容を次回発
  表する。
  第10回の対象世代は「若手層」とする。
 ・本会議終了後に、事務局より各項目の担当者について、メールで案が示された。
3.今後の進め方
 ・第10回~第12回は「世代層別の人材育成(案)の検討」を行い、全12回で懇談会は終了
  予定。
 ・成果を総括表としてまとめ、SPの会企画委員会に贈呈。
 ・懇談会の参加者、およびSPの会会員向けの取りまとめ方法については、今後検討。
4.次回予定 
 ・日時:2025年7月28日(月)15:00~17:00
 ・テーマ:「世代層別の人材育成(案)の検討(若手層)」

■日本測量協会・SPの会事務局からのお知らせ
◇「測量・地理空間情報イノベーション大会2025」資料集について
 6月17日、18日に東京会場(対面)ほか、サテライト会場にてWeb開催いたします。
 今年度も資料集につきましては、SPの会会員の皆様に送付いたします。
 各会場の受講者、講演者には別途会場でも無料配布されますので、会から資料集の送付
 が不要の方は、SPの会事務局(spatialist@jsurvey.jp)までご連絡ください。

◇「働きながら博士号取得をめざす人のための相談コーナー」
 測量・地理空間情報技術者で将来、学位(博士号)を取得したいと考えている人
 (会員以外でも可)などを対象に、博士号取得に向けて本格的な始動をするまでに
 準備すべきことや取得までのプロセス、取得方法(課程博士か論文博士か)等々に
 ついて、個別に相談できるコーナーを本年4月より設置しました。アドバイザーは
 SPの会最高顧問の瀬戸島政博氏が担当します。
 相談を希望される場合は、下記【メール記載内容】を【送付先】まで、メールに
 てご連絡をお願いいたします。
 【メール記載内容】件名:「SPの会:博士号取得のための相談希望」
  本文:①氏名(ふりがな)、②勤務先、③電話番号、④電子メールアドレス、
     ⑤相談したい内容について
 【送付先】spatialist@jsurvey.jp

◇転職・退職・死亡等により、氏名・所属・連絡先(メールアドレス)の変更が生じた
 SPの会会員の方へ。
 変更後の内容をご本人または関係者の方から日本測量協会にお知らせください。
 SPの会MM誌の配信やお知らせ等の連絡に支障が出ないようお願いいたします。

 届け出様式は以下の場所にあります。
 https://www.jsurvey.jp/gissv/youshiki.htm
 様式2 空間情報総括監理技術者 登録事項変更届出

 メールまたはFAXまたは郵送でお知らせください。
 連絡先は以下の通りです。
 メール:geoinfor@jsurvey.jp
 FAX : 03-5684-3366
 〒112-0002 東京都文京区小石川1-5-1 パークコート文京小石川 ザ タワー 5 階
 公益社団法人日本測量協会 測量継続教育センター 測量技術教育部 宛

■刊行案内        
 *** 新刊案内 ***(※会員は10%割引でご購入いただけます)
 『実務者のためのGNSS測量ハンドブック』(令和7年1月23日刊行)
 定価3,300円(税込) //会員価格2,970円(税込)
 詳しくは、https://www.jsurvey.jp/2.htm
                            (遠藤拓郎:日本測量協会)
■編集後記
梅雨空とともに暑い季節がやってきました。
既に猛暑がノーマルとなりつつある昨今において、熱中症による死亡事故も年々増加傾向
にあります。
これに対処すべく、2025年6月1日から職場の熱中症対策が労働安全衛生規則の改正により
義務化されました。熱中症による労働災害の重症化を防ぐためのものであり、対策を怠っ
た場合は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金、法人に対しては50万円以下の罰金
が科されます。?
WBGT(暑さ指数)が28度以上または気温31度以上の環境下で、連続して1時間以上または
1日4時間を超える作業を行う場合、熱中症対策を講じる義務が発生します。?
では、この WBGT(暑さ指数)とは何でしょうか。
環境省の熱中症予防サイトによると
暑さ指数はWet Bulb Globe Temperature(湿球黒球温度)の略称であり、気温、湿度、輻
射熱の3つの要素を取り入れた温度の指標とのことです。(正確には風も指標に影響する)
輻射熱とは、日射しを浴びたときに受ける熱や、地面、建物、人体などから出ている熱の
ことで、例えば、アスファルトの地面付近は輻射熱でとても熱くなりますよね。
WBGT(暑さ指数)が28度を超えると熱中症患者が急増することがこれまでの統計で分かっ
ています。蒸し暑い日は水分補給をして休憩を取り入れるなど特に注意しましょう。

環境省熱中症予防サイト
https://www.wbgt.env.go.jp/
                         (編集担当:近藤弘崇 パスコ)

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