スペーシャリスト メールマガジン バックナンバー

タイトル:メルマガ Vol.3 発行日時:2007年2月15日7時26分6秒
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2007年2月15日
◇ スペーシャリスト メールマガジン ◇ vol.3

                    発行元:スペーシャリストMM事務局
                     http://www.capnet.jp/spatial/
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INDEX : *ニュース *お知らせ *報告記事 *イベント情報 *コラム 
     *本/Webの紹介 
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■ ニュース・ラウンジ
 中国の衛星破壊実験
 空間情報関連のニュースの中で、この1ヶ月間で最も報道数が多かったものは中国の衛
星破壊実験である。多くは軍事的・国家戦略的な記事だが、ここでは宇宙環境の観点から
の記事をまとめてみた。実験は1月12日に高度約850kmを周回していた中国の古い気象衛星
を中国の弾道ミサイルで破壊したものであった。この結果直径10cm以上の破片(デブリ)
650個が高度約250〜3,500kmの範囲に拡散し、地球を囲む環のように周回している。GPSの
ように高度2万kmの衛星軌道には直接影響はないが、米国の民間調査機関(CSSI)は、高度
約400kmに現在建設を進めている国際宇宙ステーション(ISS)に最短距離で30kmまで接近
した、と軌道解析の結果を発表。九州大の宇宙工学での解析では、わが国が打上げた
ALOS(高度約700km)の軌道に南極上空で約1.4kmまで接近するデブリがあり、10km以内に
近づくデブリは計18個と分析している。宇宙環境を悪化させ運用中の衛星に衝突する危険
性を増したことは確実である。

 中国の宇宙政策
 中国の衛星破壊実験に端を発し、中国の宇宙政策を新聞紙面から拾ってみた。昨年10月
に発表した「宇宙白書」によると中国は今後5年間に有人宇宙船同士のドッキングを実現
させる目標を掲げている。今春には「嫦娥1号」を月の周回軌道に乗せる計画である。月
探査はウラン、カリウム、チタン、ヘリウム3などの資源探査が狙いで、2010年までに月
探査機と探査車を着陸させ、2020〜25年宇宙飛行士による月面活動を目標にしている。衛
星測位システムでは2000年に「北斗1号」の打ち上げに成功、現在までに3基が軌道を周回
し、将来は35基の衛星システムを完成させるという。一方EUが進めるガリレオ計画にも
20%の投資を表明している。また中国には、酒泉(甘粛省)、西昌(四川省)、太原(山
西省)の3つの衛星打ち上げ基地があるが、さらに緯度の低い文昌市(北緯19°)に4つ
目の衛星発射基地を建設、2010年の運用開始を予定している。

■お知らせ
 日本測量協会「測量技術奨励賞」受賞候補者募集のお知らせ
 社団法人日本測量協会では、少壮気鋭の技術者・研究者に対して贈呈する「測量技術奨
励賞」の応募者を現在募集しています。
 <<募集要領>>
○学会誌・協会誌等に公表された測量技術に関する論文で、公表の時期が3年以内のもの。
○応募資格は、日本測量協会の正会員であること(論文送付時に入会でも可)、今後の研
 究の可能性の高い個人とし、職域は問わない。年齢はおおむね40歳以下。
○受賞には、賞状・賞牌及び副賞(20万円程度)を贈呈。
○推薦者(自薦を含む)は、推薦書類と論文を日本測量協会あてに提出する。
○推薦書類の提出先
 〒112-0002 東京都文京区小石川1-3-4測量会館 社団法人日本測量協会事務局
○推薦書類の提出期限
 平成19年2月15日
○受賞者は、平成19年5月下旬に開催される社団法人日本測量協会第57回定期総会の贈呈
 式に出席。月刊「測量」に論文概要を掲載。
○問い合わせ先
 〒112-0002 東京都文京区小石川1-3-4 測量会館
 TEL 03-3815-5751  FAX 03-5805-7507  soumu@jsurvey.jp
詳しくは日本測量協会のホームページをご覧下さい。
http://www.jsurvey.jp/syourei.htm

■ 報告記事
 * メルマガ創刊号で第1回企画委員会の報告が掲載された。私(津留)が提案した幾つ
  かの企画は全て「その他」扱いで、かつ会員のリレーで「その他」枠を埋めていくこ
  とになった。「その他」の中身は、自己紹介や会社紹介、担当業務紹介、その他いろ
  いろでしたが、今はそれに拘ってはいません。それではコラムとの違いは何かについ
  て高委員と協議した結果、コラムは批評であり、ある種の思想が含まれ、「その他」
  は何でも自由な内容を執筆者の責任で記載したらという結論となり、かつ最後に次の
  執筆者を指名するという委員会からの指示に沿い、勝手に<リレーエッセイ;空間連
  携>と名乗ることにしました。 → ということは、最後まで読まないと怖い、最後
  まで読ませようという恐怖編集か! では、【空間連携とは何か】・・・・「その他」と
  いう表題もシャクなので、「空間連携」と呼ぶことにしました。20世紀が時間の時代
  であったのに対し、21世紀は空間の時代と言われているが、スペーシャリストがリレ
  ーしていくわけであるので「空間連携」がいい。

■ リレーエッセイ<空間連携>
 <<技術は人に宿る>>
 我が家では暖房に薪ストーブを使用している。サラリーマンが見知らぬ土地に家を建て、
薪ストーブで暖を取るのは大変だ。近所で売られている薪は、河原でのバーベキュー用で、
用途も違うし、灯油に比べてかなり高額だ。製材所も随分と回ったが、薪になるようなも
のはない。ようやく秩父の山奥で炭焼きしている零細企業から譲り受けている。割と安い
と思っているが、遠方だし、一回に運べる量が限られる。結構重くて無理に積み込むと、
RAV4のタイヤがハの字に広がり、見る者にかなりの恐怖感を与える。
 もっとも基本は、あっちこっちを歩き回ってただで集めることだ。街路樹等の枝打ちや
造成地での伐採をやっている企業はままあるものだ。うまい具合に薪に適したものが、い
つでも得られるわけではないが、パルプの原料にできない枝分かれしているところなどを
手に入れることができる。これらをチェーン・ソーでストーブに入る大きさに切り、斧で
割り、積み上げて乾燥させる。
 つらい仕事だが、薪割りという単純肉体労働と、これをやらなければ凍え死んでしまう
という感覚は、生の原初に返ったようで「生きている現実感」を与えてくれて快感だ。そ
して、利用できるまで乾燥させるまでには半年か1年が必要で、アリのようなまじめさが
求められる。
 薪ストーブでは火事が心配と考えるムキもあるだろうが、石油ファンヒータやガス湯沸
かし器やバッテリーと違って、火が見える安心感がたまらない。一向に耐えない企業不祥
事を見ていると、物作りする人間を技術者ではなく部品にしている気がする。公益通報者
保護法により内部告発者を国が守られなければならないほど、企業統治は恐怖統治となっ
てしまったのか。経済性優先のため?
 薪探しに薪割りという経済性を無視した単純労働は、精神を安定させる最高の仕事であ
る。
【空間検索:バトンの渡し先は】
 さて、最後にバトンの渡し先を指名しなければならない。つらい仕事だ。空間情報総括
監理技術者らしく、空間検索で探そう。検索キーは「技術者」である。(社)日本測量協会
の山本博さんを技術者として憧れてこの道に入った者がいた。そう、(株)パスコの川口剛
氏にバトンを渡したい。(朝日航洋株式会社:津留宏介)

■ イベント情報
* 「自治体GISセミナー―基準点からはじまる空間情報社会―」が、2月16日にさいたま
 市桜区の埼玉大学工学部総合研究棟で埼玉県測量設計業協同組合の主催、(社)日本測
 量協会と埼玉県GIS普及推進研究会の共催で開かれる。(問合せ:埼玉県測量設計業協
 同組合;電話 048-865-0281 eメール:saisokukumiai@saitama.email.ne.jp)

* 「国民参加の森林づくりシンポジウム―野生動物と地域の共存を考える―」が朝日新
 聞社、(社)国土緑化推進機構、(財)森林文化協会の主催で2月22日に東京都千代田区
の有楽町マリオンスクエアで開催される。(問合せ: (社)国土緑化推進機構、電話
 :03-3262-8451、HP: http://www.green.or.jp/ )

* 日本国際地図学会平成19年度特別講演が「第二次大戦前後の日本の地図事情」と題し
 て東京渋谷の (財)日本地図センター研修室で2月24日に開催される。(問合せ: 日
 本国際地図学会・事務局、電話:03-3485-5410、
 HP:http://www.jmc.or.jp/gakkai/oshirase/osirase.html)

■ コラム
<最近の技術者向け知財教育プログラム>

 「知的財産戦略大綱(H14)」では、知的財産権のうち、特許権、実用新案権、意匠権、
商標権の四つを「産業財産権(以前は工業所有権)」と総称している。さらに、産業財産
権に加え、著作権、不正競争防止法、国際出願に係る条約などが比較的身近な知財となろ
う。財あるいは知財法とわれわれの接点が日増しに高まっている。これまでの特許出願と
いった単一な接点だけではなく、知財戦略として高い視点から対応が求められる時代であ
る。では、どうのようにして知財の知識等を吸収するか? 比較的安価でかつ基礎的な技
術者向け知財教育プログラム等について、筆者が受講・取得したものを紹介する。

○ 特許庁主催(発明協会事務局)「知的財産権制度入門」及び「知的財産実務者研修」
知的財産権制度や特許法をはじめとする各法の審査基準などについての講義で毎年実施
されている。無料で受講できる点や審査基準などの実務資料が入手できる点が便利。
○ 東京理科大学生涯学習センターMIP(知財戦略)大学院エッセンス講座東京理科大学専
門職大学院総合科学技術経営研究科知的財産戦略専攻(MIP)のエッセンス(「特許法
・実用新案法」、「知的財産戦略」、「著作権法」、「米国知的財産事情」、「意匠法
・商標法」、「知的財産経済・評価」)などが講義されている。知財全般とライセンス、
戦略、最新情報などを習得するには最適。能動的に知財の基礎知識を吸収するには知財
検定などのトライが近道である。
○ 知的財産検定・・H20年度からは「知財マネジメント技能士」として国家検定へ知的
財産教育協会が実施している試験(1級と2級が実施)である。知財全般の知識取得が
必要な我々には2級検定が適している。特許・実新、意匠・商標・条約、著作・不競法
の3群の試験が実施され、各群で一定水準以上にあれば合格となる。なお、H20年度か
らは厚生労働省所管の国家検定「知財マネジメント技能検定」に昇格する。上記以外に
も、著作権については「ビジネス著作権検定」などがある。ともかく、手軽に知財の基
礎知識を得る機会は増えており、それらを大いに活用すべき時代であろう。(瀬戸島政
博:国際航業)

■ 空間情報関連グッズ
 ○ クニャマップ: 持ち運びできる立体地図。名前の由来はクルクルと丸めることが
  でき、離すと“くにゃ”と元に戻るところからつけられた由。素材は合成樹脂ポリオ
  レフィン、作ったのは名古屋市にある富士製作所(http://www.fuji-mfg.co.jp/)。
  登山にも持っていけるし、教材として子供たちの興味もそそる。価格は1つ2,000円。

■ 本/Webの紹介

 *「誰も読まなかったコペルニクス」オーウェン・ギンガリッチ著/柴田裕之・訳
  早川書房 2300円+税

 コペルニクス的転回と比喩される天動説から地道説への歴史的な転換をもたらせたコペ
ルニクスの「天球の回転について」は、後世、実際には誰も読まなかった史上最悪のベス
トセラーと著名なジャーナリストが決め付けていた。科学史家のギンガリッチは、世界中
に現存する約600冊を対象に、同書に書き込まれた跡を丹念に調査し、ブラーエ、ケプラ
ー、ガリレオなどへの影響を解析している。書誌学的な側面から科学史学を分析している
ユニークな本である。(瀬戸島政博)

 *「旅人−ある物理学者の回想」湯川秀樹・著 角川文庫 441円

 今年は、日本初のノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹生誕100年にあたる。同時に湯
川博士に続くノーベル物理学受賞者である朝永振一郎の生誕100年でもある。そんなこと
もあって学生時代に読んだ本書を再読してみた。改めて、皆さんに紹介するまでもない名
著であり、理工系出身者であれば一度は読んでいる書籍でもある。
 湯川秀樹は、夏目漱石の「行人」にも登場する大阪の湯川胃腸病院の婿養子となる。本
書は湯川秀樹というよりは、京都大学文学部地理学科の創設者である小川琢治の三男であ
る小川秀樹時代の自叙伝である。湯川博士の幼少時代から中間子論発表までの生活と心の
軌跡が綴られている。改めて、この時期に再読することをお勧めしたい。(瀬戸島政博)


 * 「万物の尺度を求めて−メートル法を求めた子午線大計測−」ケン・オールダー・
  著、吉田三知世・訳  早川書店・発行 定価(本体価格2,800円 + 税)

 本書は、1792年のフランス革命真只中に、子午線の長さの1千万分の1を1mにするという
メートル法を制定するために、パリを中心に子午線に沿って、北はダンケルク、南はバル
セロナに向かって測量をした二人の科学者の姿を描いている。この二人とは、北に向かっ
たドゥランブルと南に向かったメッシェンで、前者は自信家、後者は懐疑的性格という対
比の面白さがある。フランス革命の混乱した社会や暴動、落雷などの自然災害に遭遇しな
がらメートル法を求めた子午線の測量という国家事業が浮き彫りにされている。本書は、
測地測量の科学史としても大変興味深いだけでなく、フランス革命の歴史的裏側をも垣間
見ることができる。(瀬戸島政博)

 * 「スペーシャリストと語る−自然を見つめ、酒を片手に地球/計測について語りあ
  おう−」(http://spatial-k.cocolog-nifty.com/)管理者は「くにさん」で空間情
  報を主題としたブログ。空間情報関連のポータルサイトとしても活用できるので、一
  度のぞいて見てください。よかったらコメントを書いてください。(田中邦一)

■ 編集後記
 いろいろ試行錯誤を行いつつ2月号の刊行に漕ぎつけました。ニュースは「他でも入手
できるのでもっと軽くて短い内容を」とメンバーからの意見を入れて創刊号とはスタイル
を変えてみました。この号から津留企画委員の発案で“リレーエッセイ<空間連携>”が
始まりました。次回の執筆者は(株)パスコの川口剛氏です。このほかメルマガの執筆要領
とコラムの記載順番は神原氏によってメルマガホームに掲載しました。必ず見てください。
(http://www.capnet.jp/spatial/)またこの号から空間情報の関連グッズやWeb、ブログ
の紹介を始めました。これを継続していきたいので、情報をお持ちの方はどんどん投稿し
てください。今後ともみなさんのご協力をお願い致します。(田中邦一)

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