| タイトル：スペーシャリスト会報 Vol.34 | 発行日時：2009年9月15日9時48分38秒 |
| ┏ Magazine from Spatialist Club ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 2009年9月15日 ◇ スペーシャリスト メールマガジン ◇ vol.34 発行元：スペーシャリストMM事務局 http://www.capnet.jp/spatial/ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ INDEX ：＊ニュース・ラウンジ ＊リレーエッセイ＜空間連携＞ ＊コラム ＊イベント情報 ＊測量協会イベント情報のお知らせ ＊国際活動 ＊連絡事項 ============================================================================ ■ニュース・ラウンジ 測量士資格改正検討へ 「スぺーシャリストの会」の会員は空間情報総括監理技術者の資格を有している。「空間 情報総括監理技術者」認定の受験資格には測量士であることが絶対条件の一つである。そ の測量士資格制度について国土地理院は本年度中にも見直しの検討を開始すると、建設工 業新聞は報じている（2009/4/17）。ここで記事の一部抜粋する。 「同院は、地理空間情報活用のための環境整備として、人材育成などを進めていく考えで、 その一環として測量士資格の見直しを検討する。地理情報システム（GIS）の活用促進な どを目的とした地理空間活用推進基本法が07年に施行され、測量成果などの地理空間情報 の一層の活用が求められていることから、資格の制度の面からも対応することにした」 「測量士については、大学などで測量に関する科目を履修した後に、一定期間以上の実務 に従事することや、同院が実施する測量士試験に合格することが資格登録の要件になって いる。詳細は未定だが、こうした要件のあり方などを含めて見直しの検討が進むとみられ る」という。 「大学で測量に関する科目を履修しても、測量試験を受けて合格しなければ測量士の資格 が得られない」という噂が私の耳に入ってから久しい。平成20年度の測量士試験の受験者 数は2,203名、合格者219名（8.9％）で、毎年の合格率は10%前後という。合格するには難 関の資格である。いずれにしろ、今回の測量士資格制度の見直しによって測量士の資格取 得の難易度がどのように変わるのか、気になるところである。 先般、四十年前に卒業した某大学を訪問した。驚いたことに、私が学生であった当時に演 習林内の測量学実習を指導してくれていた教官が研究室にいるではないか。「定年で退官 したが、測量学を教える先生がいなくて、時間雇用職員で学生達を教えている」と老先生 は言う。寂しいことである。この年の「地理空間情報2009フォーラム」の会場で、「ス ぺーシャリストの会」の会員である日本大学の田中邦一氏と出会った。「高さん、学生達 を引率してきた」と告げた。傍には学生達がたむろしていた。彼らは「大学などにおける 測量・地理空間情報分野の研究成果の展示」のコーナーでブースを出展するという。嬉し いことである。大学によっては測量学に対する温度差を感じた。 地理空間情報の活用を推進するためには人材育成などを進めていくというならば、大学に おいては先ずは教える側の教官の量と質の充実が優先されるべきであると認識する。それ によって、教わる側の学生が卒業して地理空間情報の活用を推進する、担い手としての測 量士が生まれていくものと思っている。「鶏が先で、卵が後」である。 （高 泰朋：朝日航洋） ＜編集委員会よりお知らせ＞ １０月号は瀬戸島さんです。 ■企画委員会報告 ◎報告記事 ＜企画委員会＞ 企画委員会（９月）が、下記の通り開催された。 日 時： 平成21年9月8日（火） 13:30〜15:30 場 所： 日本測量協会（本部）301会議室 出 席： 瀬戸島、林、津留、秋山、鈴木、望月、池田、田中、早川、白井、大友、高岸 議 事： 以下の報告が行われた。 【議題 �｜翩�地区空間情報監理技術者の会（仮称）】技術士第一次試験対策講習会に37 名の応募があった。会内部での勉強会、愛知県での無償の社会活動としての測 量に関する講習会などを検討中である。メールマガジンに活動報告を掲載する。 【議題 �▲瓠璽襯泪�ジン】10月からのコラムは、21年度参加会員となる。 以下の議題について討議した。 【議題 ��GIS/NEXT記事】当会の役割について、空間情報の整備と流通の全般に具体的な 役割を検討する。次年度は、GIS/NEXTの記事をもとに当会あるいは空間情報総 括監理技術者の役割の深掘りを行う。 【議題 �し邊�測量「会のコーナ」】第５弾「現場主義」の執筆者は、第１回岩切氏、第 ２回大塚氏、第３回大堂氏、第４回木下氏、第５回岩波氏、第６回小更氏に決 定した。 【議題 �ゥ咼献優江霾鵐侫．ぅ襦枋媛叩�削除項目について協議した。 【議題 ��出版計画】「文章表現技術指南」について、継続審議とした。 【議題 �Я躄顱�10月6日（火）15:00から測量協会にて開催することを決定した。特別講 演、人事、予算、活動計画等について協議した。 【議題 �┳萢兢�況】上半期における資格の活用状況を各社で調査することにした。 【議題 ��その他】第１回目の合格者の更新が来年となる。更新には測量CPD 25ポイント が必要であることを周知させる。 【議題 ��次回予定】次回は11月19日（木）13:30〜 測量協会 （津留宏介:測量協会） ■リレーエッセイ 先日、政権交代を成し遂げた民主党は、温室効果ガスの排出量を2020年までに1990年比 25％削減することを中期目標として明示しました。これにより、各企業の温暖化対策も今 後は大きく加速するのでしょうか。 今回は私の身近でみられる環境関連の話題として、光化学スモッグについて記載します。 皆さんは光化学スモッグってご存知ですか。私の住んでいるところでは、気温が高く風の 無い日、年に数回、光化学スモッグ注意報発令のサイレンが鳴らされます。小学生の頃、 社会の時間に学んだ記憶がありますが、「光化学スモッグ」とはどのような現象かうまく 説明できないため、調べてみました。 「光化学スモッグは、自動車や工場などから排出される大気中の窒素酸化物や炭化水素が 紫外線を受けることで、地表付近の光化学オキシダント（オゾンなどの二次的汚染物質） 濃度が高まる現象」とのことですが、濃度が高まる条件についても良くわからないため更 に調べてみると、以下の条件で濃度が高まるそうです。 ・高い気温（最高気温が25度以上） ・強い日差し（朝9時〜午後3時の間に2.5時間以上の日照がある） ・弱い風 ・安定した大気 つまり、今後地球温暖化が進み気温の高い日が増えると、光化学スモッグが発生する頻度 が増加するということでしょうか。 現在は、高度成長期のように自動車や工場からの煙も比較的少なく、さほど気にするまで も無い様にも思われますが、別の要因も言われています。そうです中国です。今年もあっ たとおもいますが、全国的に光化学スモッグが発生することがあります。この原因として は、経済成長著しい中国の大気汚染が気流に乗って日本へ運ばれ、スモッグを発生させて いる可能性が高いと言われています。 そこで、光化学スモッグが発生した場合に気を付けなければいけない事を併せて調べて みました。光化学スモッグが発生すると、目がチカチカしたりのどが痛くなったり、めま い、吐き気、頭痛、しびれなどの症状が現れることがあるそうです。発生時の対応策とし ては、 ・注意報が出たら外出を控える ・目やのどに症状が出たら屋内に入って目を洗いうがいをする ・気分が悪い時は涼しい場所で安静にする とのことでした。いずれにしても、光化学スモッグ注意報が発令されたら、外出は避け屋 内でのんびりと過ごす方がよさそうです。 中国経済の発展とともに、今後も光化学スモッグの発生頻度が高まるのでしょうか。時 空間的に影響を及ぼすこのような環境問題については、地理空間情報に携わる者として興 味深いところであり、定量的な解明を見守りたいと思います。 次回のリレーエッセイは、優しそうなアジア航測株式会社の船越さんに執筆をお願いし たいと思います。事前の了解は頂いてませんが、是非ともよろしくお願い致します。 （横田浩：パスコ） ■コラム MM開始時に設定されていた執筆順番に２０年度合格者の方を加えて掲載しておきます。 これまでに執筆を忘れていた方からの投稿も受け付けております。 ●執筆順番 2007年1月号 神原（五星） 2月号 瀬戸島（国際）、住田（アジア） 3月号 高（朝日）、望月（パスコ） 4月号 津留(朝日)、土方(国際) 5月号 池田(アジア)、林（パスコ） 6月号 赤松(国際)、秋山(朝日) 7月号 内田(アジア)、大石(国際) 8月号 大友(国際)、北原(地域みらい) 9月号 木下(ランド)、楠(パスコ) 10月号 東田(国際)、沼田(アジア) 11月号 野村(国際) 12月号 福田(朝日)、村木(イメージワン)、早川（帝国）、畠(アジア) 2008年1月号 横山(大成ジオ)、渡辺(アジア)、鈴木（中日本） 2月号 与(パスコ)、及川(国際)、白井（国際） 3月号 大谷(国際)、大橋(パスコ) 、伊藤鋭二（パスコ） 4月号 大山容一(国際)、岡本(パスコ)、岩切（パスコ） 5月号 川口剛(パスコ）、黒台昌弘(ハザマ)、岩波英行（国際） 6月号 佐々木(パスコ)、品澤(パスコ)、大堂（アジア） 7月号 菅原(パスコ)、高木(国際)、小川（アジア） 8月号 高岸(パスコ)、田中(日本大学)、織田（アジア） 9月号 筒井(パスコ)、長谷川(国際)、垣内（パスコ） 10月号 畠山(国際)、廣瀬(国際)、菊池（パスコ） 11月号 三浦(パスコ)、三島(パスコ)、北原（アジア） 12月号 南澤(パスコ)、森田(パスコ)、斉藤（アジア） 2009年 1月号 島田（国際）、外山（中日本）,正岡（２０年度） 2月号 中野（アジア）、中本（パスコ）、坂下（２０年度） 3月号 藤井（アジア）、安野（アジア）、窪田（２０年度） 4月号 山田（パスコ）、渡邉（パスコ）、足立（２０年度） 5月号 橘（２０年度）、塚原（２０年度）、長澤（２０年度） 6月号 廣野（２０年度）、平田（２０年度）、横田（２０年度） 7月号 柴田（２０年度）、小更（２０年度）、阿部（２０年度） 8月号 船越（２０年度）、八木（２０年度）、大塚（２０年度） 9月号 中谷（２０年度）、吉川（２０年度）、西村（２０年度） 10月号 田中（２０年度）、吉岡（２０年度） ■コラム 固定資産税のはなし 北陸では短い夏が終わり、はや秋の気配が近づいてきています。このコラム投稿も暑い 日が締切のはずなのに今夏は暑い日がほとんどなく締切を忘れてしまうほどでした。コラ ム表題の「固定資産税」というと空間情報と一見無関係のような印象ですが、いまでは空 間情報（航空オルソ写真、ＤＭ，ＤＥＭ，ＤＳＭなど）を活用したデジタル化された固定 資産の評価方法に変貌してきています。この変貌は次の機会にさせていただき、私たちが 納税している固定資産税のさわりを紹介したいと思います。固定資産税は、固定資産（土 地、家屋及び償却資産）に課税される税金で、賦課期日（1月1日）現在の所有者が固定資 産の所在する市町村に納税する義務を負います。このときに課税対象となる固定資産の価 格は基準年（直近では平成21年1月1日）が課税標準となり、3年間据え置かれます。つま り、土地や家屋の価値価格が大きく変わっても、課税対象価格は3年間変わらないことに なっていて、当たり前のように納税している固定資産税ですが、何だか面白い仕組みとな っています。われわれの空間情報技術は測量分野・建設分野などだけではなく、一見関係 の薄いような税務分野にも活用されている昨今です。 （八木鋼治：朝日航洋） ■コラム 趣味でも空間情報 自宅（伊豆）から新幹線の三島駅まで15kmほどを自転車通勤、その後静岡駅まで新幹線 通勤、ということで毎日2時間弱の通勤をしています。はじめは、健康のためと思って始 めた自転車通勤ですが、ちょっとはまってしまったようで、週末も自転車で遠くに出かけ ることが多いです。 そんな、自転車ですがブルベ（http://www.audax-japan.org/index.html）という長距離 サイクリングに参加しています。これは、決められたルートを決められた時間内に走るも のです。具体的には200km（13.5hr）、300km（20hr）、400km（27hr）、600km（40hr）、 1000km（75hr）となっています。 コースは、進行方向や走行距離が紙に印刷されたもの（キューシートという）に従って走 るのですが、夜間などはとても見難いのです。先日（8/8）も宇都宮からいわきの勿来ま で往復（300km）してきたのですが、夜間になるとキューシートが見難くてついついミス コースしてしまいました。おかげで60kmほど余計に走ってきました。 空間情報総括監理技術者ではありますが、いまだにアナログなキューシートに頼っている 私に対して、他の参加者の自転車を見てみると半分以上の人がGARMIN社のGPSを装備して います。機種も、もっともスタンダードなGPSMAP60CSxを代表として、Colorado300・Oreg on300・Edge705など、まるでハンディーGPSの見本市のようです。そして皆さんが、ALPSL ABやカシミールを使って、いろいろ工夫されているようで、その会話は私には理解できな いものでした。また、GPSを使うことでミスコースによるストレスなどもなく、走ること に集中出来るようです。私も、一応その方面のプロであるのですから、GPSを導入して楽 しく走れるようにしたいなと思う今日この頃です。 (大塚啓一: フジヤマ) 編集の都合上、阿部様、中谷、吉川、西村様については次回に掲載させていただくこと としました。 ■空間情報関連便利グッヅ / Web & Blogの紹介 ＊“たわたわのページ”は、ペンネーム川柳五七（せんりゅう・いな）さんのblogです。 いろいろ趣味をお持ちで、その一つ「地図」趣味歴24年だそうで“川柳五七の地図のペ ージ”を開いている。測量、地図図式、記号から地図表現、計測まで6つのカテゴリー に分けて書いている。一度ごらんになってみてください。 （田中 邦一：日大） http://www.tawatawa.com/page010.html ■本の紹介 「海人不倦（あまはうまず）友田好文：人と業績」 「海人不倦」発行委員会編集・発行 海猫屋 四六判 416ページ 3675円（本体価格 3500円） http://www.uminekoya.co.jp/ 日本の測地学・海洋学の発展の上で、海外にも例のない海上重力計などの多くのセン サーを開発し、プレートテクトニクスの証明となる物理探査をおこない北西太平洋の重力 測定を成功させたアースサイエンティスト友田好文(東京大学名誉教授)は、いくつかの別 の顔を持っていた。あるときは画家であり、彫刻家であり、随筆家でさえあった。人はい ったいいくつの顔を持つのであろうか？ 多才さゆえに教授に影響を受けた多くの関係者 が、故人の人と業績についてまとめ上げた。 （秋山幸秀：朝日航洋） 日本でいちばん大切にしたい会社 坂本光司 著 �蠅△欺佝� 「現場で中小企業研究や、がんばる中小企業の支援をする」ことをモットーとしている 著者が研究室を飛び出し6000社を超える企業を訪問調査した中から5社を選び「大切にし たい会社」として紹介している。何れも、立地条件が良いとはいえない、成熟産業の中、 ひなびた地方の商店街の家業的小売店舗などの環境下にあっても、顧客の絶大な支持を受 け、好業績を持続している企業。その秘密は？ 測量企業でこんな会社は出てこないだろ うか？ 読んでいて涙が出てくる、ぜひご一読あれ。（田中 邦一：日大） ■測量協会イベント情報のお知らせ ◎Ｈ21年度 ｢空間情報総括監理技術者｣認定資格試験について 最終合格者 27名 平成21年9月11日付けで測量協会ホームページに掲載 ◎セミナー ■サーベイアカデミー「地理空間情報イブニング・セミナー(第12回)」16時より 講師 白井康友 (社)日本測量協会 測量専門技術教育部長 日時 平成21年11月19日（木）16時〜17時30分 演題 ｢地理空間情報を支える基準点の最新動向｣ 2010年1月1日からセミ・ダイナミック補正を公共測量に適用 内容 「いつでも、どこでも、だれでもが現在の正確な位置を知ることができる環境 整備」を実現するための基盤となる基準点の座標メンテナンス(セミ・ダイナ ミック補正等)などについて最新情報を交えて紹介します。 参加費 会員(特別会員含む)は無料 非会員は2,000円 会場 会場 (社)日本測量協会 研修室(文京区小石川) CPD対象セミナー（CPD１ポイント発行） 問合わせは サーベイアカデミー事務局 03-5684-3360 ■日本測量協会 公開講座 15時より 「測量・地図の文化講座」 第2回テーマ「地図と景観」 日時:平成21年10月23日(金) 15時〜16時30分 講師:星埜由尚 (（社）日本測量協会副会長・元国土交通省国土地理院院長) 会場:日本測量協会 研修室(東京都文京区小石川) 参加費:会員は、無料 非会員は2,000円 CPD対象セミナー（CPD１ポイント発行） 申込は事前にメール（open-lc@jsurvey.jp）またはFAX（03-5684-3366）で 登録が必要です。 ■お知らせ CPDのポイントについて 協会で開催しております、講習会・セミナー等に参加された方は、CPDの対象の場合、 受講書の発行日から6ヶ月です。 それを過ぎますと、無効に成りますのでご注意ください。 （廿楽:測量協会） ■ちょっと・ちょっとコーナー ｛津留宅を尋ねて（2009/07/25）｝ 今日は土曜日。日本測量協会に勤務する津留氏の自宅を訪ねた。午後から津留宅の庭で 「バーベキュー・パーティー」が開かれるのである。二週間ほど前、「スペーシャリスト の会」企画委員会宛にこのイベントがメールで知らされた。 津留宅が埼玉県内の高麗（こま）駅の近くにある。高麗には高麗神社がある。その神社の 主祭神はかつて朝鮮半島北部に栄えた高句麗国からの渡来人高麗王若光である。六六八年 に唐と新羅によって滅ぼされた高句麗国から渡来した若光は七一六年に未開の原野であっ た高麗郡の首長として当地に赴任し、高麗人一七九九人と共に開拓に当たったという。若 光が没した後、高麗郡民はその徳を偲び、御霊を「高麗明神」として奉った。これが高麗 神社創建の経緯らしい。神社は若光の子孫が代々宮司を務めている。 高麗駅行きの電車内で、林氏、望月氏それに鈴木氏と出会った。私は革靴を履いていたが、 三人は運動靴を履いていた。まるでピクニックにも行くような服装であった。電車は高麗 駅に約束の時刻の十二時四十一分に着いた。駅前の広場には高さ五メートルぐらいの赤っ ぽい柱が二本並んでいた。その一つの柱の台座に津留氏が座って待っていた。彼の横に白 井氏がいた。「いらっしゃい！」津留は立ち上がって、私達を出迎えた。二本の柱は朝鮮 半島からの渡来人が信仰する天下大将軍、地下女将軍の二体である。天下大将軍は地上の 偉大な神、地下女将軍は地下世界の偉大な女神である。二体は厳しい眼差しをしていた。 このパーティーの参加者は七名である。後の二人は遅れるというので、先に津留宅に行く ことにした。蝉の鳴き声を聞きながら歩いていると、汗が出て来た。午前中は曇っていた が、昼頃から雲の間から日差しが差し、蒸し暑くなってきた。 五分余り歩いたところに津留宅が見えた。二階建てのログハウスである。庭にはテーブル 付きの大きなパラソルや数脚の折りたたみ椅子などがセットされていた。庭の隅にはブロ ックで囲まれたかまどが作られ、薪が整然と積み重ねられていた。家の中には薪ストーブ があった。冬は庭にある薪を燃やして暖を取るのだろう。私はタバコを吸いたくて先に庭 に出た。周辺は梅や栗の木が植わっていた。一息ついていると、全員が庭にやって来た。 ホスト役の津留氏がかまどの中に炭や薪を入れ、火をおこし始めた。彼の奥さんが多量の 枝豆と缶ビールを運んできた。先ずは乾杯である。ビールは冷たくて喉元を潤した。 林氏と白井氏が熱くなったかまどに鉄板を置き、ウインナーを焼き始めた。照りつく太陽 の暑さと燃える火の熱さで二人は盛んにタオルで汗を拭いていた。ウインナーが焼き上が ると、今度は肉である。そのとき、遅れてきた二人が庭にやって来た。住田氏と秋山氏で ある。これで全員が集まった。さあ、改めて乾杯である。ビールを飲みながら焼けたウイ ンナーや肉などを頬張った。家の中では奥さんが、「これを運んで！空いた皿を持って来 て！」と、野菜や漬け物を皿に盛っては亭主に指示していた。「どこの家も同じだなあ …」と誰かが言った。その言葉を聞いた私は「家庭はカカー天下の方が平和だよ」とつぶ やいた。全く私の夫婦関係と同じである。女房が上司と思えば我慢ができる。 焼く肉が終わる頃、「今から、富士宮の焼きそばを作るよ！」静岡県の富士宮市出身の望 月氏が言った。彼は焼きそばの材料を持参していた。富士宮の焼きそばは肉かすを使用す るのが特徴らしい。が、肉かすを忘れてきたようだ。早速、望月氏は首にタオルを巻いて、 鉄板の上で焼きそばを作り始めた。しばらくして、皿に盛られた焼きそばが私に出された。 早速、口に入れた。「美味しいよ。この麺はスーパーで売っているの？」と尋ねた。「こ の麺は富士宮市内のスーパーなら売っていますよ。肉かすがあればもっと美味しいです が」と望月氏が残念そうに答えた。「宇都宮のスーパーで？」と少々酔いの回ってる津留 氏が聞き直した。「富士宮ですよ！」と林氏は横から言った。全員がこれを聞いて笑い出 した。 焼きそばを食べ終えた頃、どこからか心地よい風が吹いてきた。午後五時を知らせるチャ イムの音が聞こえてきた。そろそろお開きの時間である。椅子に座っていた皆が立ち上が って椅子や空缶などを片付け始めた。そして奥さんに礼を述べ、全員が高麗駅に向かって 歩き始めた。〈スペーシャリストの会の運営で頑張っている企画委員にはたまにこのよう な息抜きの場があっても良いことだ。しかし、夏は暑い！願わくばバーベキュー・パーテ ィーは春か秋にして欲しい〉私は歩きながらそう思った。いずれにしても、楽しいひとと きであった。 …ちょっと、報告まで。 （高 泰明：朝日航洋） ■国際活動 第16話 ソウルでの日韓測量協会協議会 日本測量協会と韓国測量協会は、毎年情報交換会をしている。韓国測量協会は、日本で 言えば、全国測量設計業協会連合会(全測連)のような業団体を兼ねている。日本測量協会 と同じように検定事業で主たる収入を得ている。個人会員は、約8,000人で日本とほぼ同 じ。法人会員は、約1200社。 韓国の測量資格は日本と少し異なる。日本で言う「技術士」の中に、測量部門があり、 測量技術士がある。測量士と測量士補に相当する資格のほかに、技能士と称してアシスタ ント役がある。日本の士補と同じ立場である。韓国の測量士補は、測量士により近く、技 能者より格が上である。 韓国では政権交代に伴い、水路測量、地籍測量、海洋測量、測地測量の4つが国土海洋 部に統合された。このため、測量に関する予算は20倍もの増加をしたという。このため、 昨年度に法人会員が800社から1200社と50%増を示した。うらやましい話と聞いていると、 アメリカ発の経済不況で今年は予算が急減し、施設の維持管理関係の予算しかなくなり苦 労しているという。 わが国では、2010年9月19-21日にパシフィコ横浜で「G空間エキスポ」の開催が決まっ たが、韓国では「デジタル国土情報エキスポ」を今年の9月に開催するという。韓国は行 動が早い。韓国側は、検定に関する技術習得に、2名を4ヶ月日本に派遣したいを申し入れ があり、来年の5月ごろから日本測量協会で受入れる合意をした。 私は、韓国測量協会の会員約100人を相手に「日本の測量の現状と展望」と題して講演 をした。韓国人は意外と日本の測量事情を知らない。断片的にしか知らないので、歴史的 な変化の流れと、日本人のものの考え方を説明した。大変喜ばれた。 韓国測量協会の金元翼(キム･ウオンイク)会長初め役員が、日本側のメンバー３人(村井、 小野、篠原）を接待や案内をしてくれた。市内にある奉恩寺と宣陵を見学した。似ている ようで少し異なる韓国文化に触れて興味深かった。最後の日には、北朝鮮との国境を接す る「烏頭山（オドサン）」展望台に連れて行ってもらった。望遠鏡でのぞいた北朝鮮の村 は、未舗装の道路であった。建物はあるが、車も人も見えなかった。すべてイミテーショ ンの村だそうである。イムジン川と境界を分かつが、最小の川幅は450m。北朝鮮の宣伝ビ デオにあった、空中ブランコなどの曲芸は息を飲むほどすごかった。おそらく世界一であ ろう。しかし、分断された北朝鮮から亡命してきた北朝鮮人は、韓国側で再教育に苦労し ているという。通訳をしてくれたキム・セイゲルさんもお父さんと二人で南に逃げてきた。 母親と兄弟姉妹とはそのとき別れたきり、音信がないという。北朝鮮問題が急に身近に感 じられた。 （村井俊治 2009.7.24） ■編集後記 本格的な夏がこないまま、あっという間に秋風の吹く今日この頃です。政治の世界では 先の総選挙によりこれまでの自民党政権から民主党政権に変わることとなり、大きな変化 の波がやって来たようです。変化の時こそチャンス到来とも言われます。我々は世界的視 野で考え市民的目線で行動してゆきましょう。 （編集委員長） ──────────────────────────────────────── All Rights Reserved, COPYRIGHT(c) Spatialist Club このメールマガジンを紹介したい方は各自の責任で転送しても結構です。 ──────────────────────────────────────── |
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