| タイトル：スペーシャリスト会報 Vol.56 | 発行日時：20011年8月15日10時44分11秒 |
| ┏ Magazine from Spatialist Club ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 20011年8月15日 ◇ スペーシャリスト メールマガジン ◇ vol.56 発行元：スペーシャリストMM事務局 http://www.capnet.jp/spatial/ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ INDEX ：＊ニュース・ラウンジ ＊各支部活動報告 ＊リレーエッセイ＜空間連携＞ ＊コラム ＊空間情報関連便利グッズ / Web & Blogの紹介 ＊測量協会イベント情報のお知らせ ＊連絡事項 ============================================================================ ■ ニュース・ラウンジ 「ハザードマップを考える」 最近、1ヶ月間で３人の著名な先生の講演を拝聴する機会に恵まれた。講演日程が早かっ た順にご紹介すると、□福和伸夫先生「東日本大震災と歴史に学ぶ今後の防災」；名古屋 大学 大学院環境学研究科副研究科長、減災連携研究センター教授を兼務。東北地方太平 洋地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門委員会委員、□河田惠昭先生「東日本大 震災復興計画について」；関西大学 社会安全学部長 社会安全研究科長。東日本大震災 復興構想会議委員、中央防災会議 東北地方太平洋地震を教訓とした地震・津波対策に関 する専門委員会座長 人と防災未来センター長、□村井俊治先生「地理空間情報時代を迎 えて」（建設コンサルタント業務・研究発表会基調講演）；東京大学名誉教授、日本測量 協会会長。 福和先生のお話は、869年の貞観地震をはじめ、歴史的事象からの教訓がどのように減災 へ繋がるのか、軟弱地盤上に発達する我が国の社会資本（都市）の地震に対する脆弱性、 専門家も含めた市民の防災意識の低下など、今後の災害対策のあり方を認識させられる内 容であった。特に、“末の松山波越さじ”“沖の石乾く間もなし”という多賀城の話、波 分神社、波切不動、石碑（津波の到達点）、奥州街道といった点や線といった空間情報や 「川」「谷」「津」などの地名だけでも地震（津波）ハザードマップができるのではない かという指摘は、普段、最新技術を活用した高度な企画書作成に奔走されている会員には どう聞こえるだろうか。 河田先生は、2ヶ月間で12回に及ぶ復興構想会議でとりまとめられた「復興への提言〜 悲惨のなかの希望〜」を基に、これからの対応、東日本大震災が惹起した問題、最悪被災 シナリオなど、いつもながらエネルギッシュなお話だった。特に、惹起された問題の中で、 「なぜ、住民は避難しなかったのか？」という点である。これは、先生の著書である「津 波災害〜減災社会を築く」（岩波新書）の出版のきっかけは、2010年の2月のチリ沖地震 津波の際の避難率の低さ（日本の津波常襲地帯での）＝「こんなことではとんでもないこ とになる」という危機感からと記されているが、これがまさに現実となってしまったので ある。特に、“ハザードマップが安心マップになっていた”という指摘は、痛烈であった。 東日本大震災では、安全とされていた避難所が被災してしまったケースも多く、地域によ っては半数程度の避難所が被災し、多くの犠牲者を出した悲劇は忘れてはいけない。 村井先生のお話は、基本的には地理空間情報技術の講演であるが、先生ご自身の曾祖父 様が明治の三陸津波の犠牲者であることから話され、東日本大震災の教訓、地殻異常変動 発生危険度予測、空間情報総括監理技術者試験まで、多岐にわたったものであった。特に、 震災直後の衛星などによるリモートセンシング、ＧＩＳ、ＧＮＳＳ、デジタル写真測量、 電子光学測量など、地理空間情報技術が果たした役割については、その大きさと我々の責 務を再認識させられるものであった。一方、「ハザードマップを信じるな」というような 教訓が生まれないよう、ハザードマップを作成する重要性についても指摘された。 今回は、ハザードマップについてふれたが、被害想定の重要性と市民の防災意識につい て再認識するとともに、空間情報コンサルタントとして、今後の防災・減災、復興に向け て果たすべき役割を、今一度考える良い機会となった。 （林 義政：パスコ） ＜編集委員会よりお知らせ＞ ９月号は住田さんの担当です。 ■企画委員会報告 日時：平成23年7月20日（水）13：30〜15：30 会場：日本測量協会 301号室（３F） 出席者：瀬戸島、住田、林、池田、望月、鈴木、秋山、村木、大伴、大友、田中、高岸、 中舎、早川、廿楽（事務局） 欠席：白井、津留、北原、高、神原、井畑 議事 1.前回議事録の確認 2.報告事項 �ゞ�間情報総括監理技術者の会支部活動報告（中部、東北、関西、東京） ��MM誌の記事等について MM書籍紹介 朝日：秋山、パスコ：林、国際航業：大友、 アジア：池田か他の方、五星：神原 �Ｂ�23回イブニングセミナーへの参加要請 日時：平成23年9月15日（木）16：00〜17：00 場所：日本測量協会 研修室 演題：「電子基準点データを利用した地殻変動の把握」 講師：山口範洋（清水建設�蟲蚕儻Φ羹蟾眦抖蚕儷�間技術センター） �じ�開講座‐中国の測量と地図‐ 日時：平成23年10月6日（水） 場所：日本測量協会 研修室 講師：今村遼平（アジア航測） 3.討議事項 �〃邊�「測量」スペーシャリストの会コーナーの分担執筆の確認 （1）6回シリーズ：第8弾「リスク管理」 (ア)第1回：アジア航測 藤井氏（災害発生時の危機管理） (イ)第2回：中日本 松岡氏（大切なのは失敗例） (ウ)第3回：パスコ 未定 (エ)第4回：国際航業 未定 (オ)第5回：朝日航洋 八木氏（未定） (カ)第6回：玉野 近藤氏（未定） （2）6回シリーズ：第9弾「研究開発」 (ア)第1回：アジア航測 (イ)第2回：パスコ (ウ)第3回：国際航業 (エ)第4回：朝日航洋 (オ)第5回：中部地区から (カ)第6回；未定 �◆�G空間情報技術の商品事例から問題発見・解決力を知る（仮称）」執筆と 編集進捗状況確認 （1）3編ほどまだ執筆中で、その他は概ね完了 （2）スケジュールの確認 (ア)章単位8月15日までに章をまとめ事務局に提出 (イ)事務局校正 8月中旬〜9月上旬 (ウ)事務局校正 9月上旬〜9月中旬 (エ)事務局最終校正 9月中旬〜9月下旬 (オ)印刷 9月下旬 → 刊行 10月中旬予定 4.次回SPの会企画委員会 日時：平成22年9月15日（木）午後1：30〜15：30 会場：日本測量協会３F 301会議室 ■中部支部活動報告 開催日時：平成23年7月29日(金) 15：00〜17：00 開催場所：�螢僖好鈎翩�事業部 出席： 8名出席、 10名欠席、田代事務局長（日測協） 検討協議事項： 検討事項 １．地理空間情報産学官中部連絡協議会WCへのオブザーバーとして参加 現時点で協議会WCの目的等が不明確なため、SP会から積極的なアプローチはせずに 要請を受けてから、改めて対応等を協議検討して決定する ２．イブニングセミナーin中部 5月17日の企画委員会に年１回が限界と報告していたが、以下の要件を踏まえて2回 目の開催の調整をする。 �々峪嬪縦蝓�北原部長、SP会員 ��開催予定日：平成23年12月9日（日本測量協会講習会の開催日に合わせる） ��セミナー会場：田代事務局長に依頼する �て睛董Ч馘效詫�院中部地測 産学官をテーマにした1時間程度の講演を依頼する （SP会員）1時間程度 なお、イブニングセミナーの主催は測量協会であるため、SP会が直接関与することはな いが、中部においては企画や準備程度ならばSP会として活動しても良いと申し出ている。 また、関西のSP会では関東で開催したイブニングセミナーをWEBで開催して関西のイブ ニングセミナーとした事例がある。 ３．平成23年度愛知県建設事務所研修について 研修は以下のよう行うよう準備を進める �々崕�日：11月頃 予定 ��講師：早川氏、佐々木氏、渡辺氏 予定 �Ｆ睛董���)テーマをレーザー計測とMMSとし、以前発表した内容をアレンジして1時間 程度でおこなう。 �髻砲泙拭�SP会とSP会員会社の実務実績のある内容を10分程度で2社紹介する ＊尾張建設の了解を得てから、各社が該当する内容をリストアップして早川氏に提出 する ４．その他 1)田代事務局長からの議事 「名古屋大学 林研究室（都市計画、交通工学系）の大学院生との意見交換の開催につ いて」 SP会としては、概ね実現可能で了承できる内容であるが、可能ならば具体的なテーマや 大学院生の発表などに対して意見交換することが望ましいと判断する 2)田代事務局長からの提案 「SP会をもっと対外的にアピールする必要がある」 ex)過去の発注業務一覧を各発注者に提示して、実状を認識してもらう 空間情報総括監理技術者が必要とされる業務や技術をアピールして認識してもらう 空間情報総括監理技術者に相談可能な技術や内容をアピールして認識してもらう SP会としては、提案して頂いた内容に対して積極的に実施していくことが望ましい と判断し、具体的な活動に関しては今後検討していくこととする 報告事項 １．Ｈ２３年度の技術士１次講習会について 平成23年度 技術士1次試験講座 開催日時：6月3日 参加者８名 講師：岡本、早川、濱田（日本技術士会） ２．イブニングセミナーｉｎ中部の実施について 第1回イブニングセミナーin中部 開催日：6月９日 参加者３９名 講師：鈴木、外山、前田 ３．国土地理院中部地方測量部との意見交換会 開催日時：7月１日 参加者：3名（北原部長、山本管理官、畠山次長） 中部SP会：6名（白井、外山、片岡、佐々木、小川、早川） 地理空間情報山学官中部連絡協議会WCへのオブザーバーとして参加要請があった。 参加要請を受託。開催は9月の予定 ４．平成23年度愛知県建設事務所研修について 5月31日に早川氏、外山氏で事務所を訪問し事務所の要望を聞いた。 内容は別紙のとおり。 ５．その他 �］∈棔〃邊�「測量」スペーシャリストの会 次回執筆者 近藤泰徳氏（玉野総合C） 2012年1月号掲載（締切り11月10日） �∀∈棔〃邊�「測量」スペーシャリストの会 テーマ「研究開発、技術開発」 6回シリーズ 第9弾 執筆者予定 前田修氏（ダイム技術S） 2012年7月号掲載予定（締切り5月10日） �９崕�会 地理空間情報技術セミナー（日本測量協会 主催） 講習日：11月29日(火)、場所：中統奨学館ビル「CHUTOホール」 �す崕�会 空中写真に関する講習会（日本測量協会中部支部 主催） 講習日：12月9日、講師：佐々木康博氏 メンバー勉強会：パスコ筒井氏 次回会合：日時：平成23年9月13日（火） パスコ 中部事業部 時間：15:00〜17：00（予定） ■東北支部活動報告 日時：平成23年8月3日（水）15：00〜16：00 場所：ソキア仙台ビル２Ｆ（宮城野区五輪1-6-6） 出席：５名、欠席：５名 議事項目 （１）討議事項 １）本年度の活動について ��9/9（金） 16:00〜17:00 ・第１回セミナーの開催 「最新型VRS-GPSを使用したデータ取得講習（仮称）」（無料）：会員 ※「ネットワーク型RTK-GPSを利用した基準点測量講習会｣(日本測量協会主催： 約40名が応募)の講習中に60分程度時間をいただき実施する。 ※タイトルや具体的な内容については、大津支部長（（株）パスコ）で検討し 8/12（金）までに菊池事務局長まで提出する（講習会参加者に講習資料と ともに送付）。 ��9/21（木）17:00〜18:00 ・第２回セミナーの開催 「GPSリアルタイム観測技術のインパクト（仮称）」（無料）：会員 ※「簡易型技術提案書講習会｣(日本測量協会主催)の講習後に60分程度時間を いただき実施する。 ※タイトルや具体的な内容については、及川副支部長（国際航業（株））で 検討し8/12（金）までに菊池事務局長まで提出する（講習会参加者に講習 資料とともに送付）。 ��CPDについて ・ポイント数等について菊池事務局長で確認し連絡する。 ２）東北支部会議について ・第２回：8/3（水）15:00〜17:00、第１回、第２回のセミナー開催の内容協議 ・第３回：9/21（木）第２回セミナー終了後、 第１回、第２回のセミナーの総括 （反省点および改善点：30分程度を予定） ※支部会議後、瀬戸島会長を囲んで懇親会（小野より予定を確認） ・第４回：1/18（水）平成24年度の活動方針策定 ３）支部長の改選について 小野の転勤により今後は以下の体制により運営する。 ・支部長：大津泰弘（新任） ・副支部長：中野修（重任）、及川典生（新任） ■リレーエッセイ 『細井平州先生に学ぶこと』 パスコの佐々木康博です。アジア航測の正岡さんから引き継ぎました中部在住のスペー シャリストです。もっとも私の場合は、ずっと名古屋で勤務しており、これまで幸か不幸 か転勤はしたことがありません。現在は名古屋市内に住んでいますが、生まれは名古屋市 に隣接する東海市出身です。お盆も近くなったので実家に帰った際に、成人なってから久 方ぶりに平州記念館を訪れましたので、今回はローカルな話ですが東海市を代表する偉人 の紹介をしたいと思います。 細井平洲先生は、藩政改革で有名な米沢藩主・上杉鷹山の師として活躍し、晩年には、 尾張藩に仕え、藩校・明倫堂の初代督学となった人物です。「学んだことを生かす」とい う実学が平洲先生の信条で、吉田松陰や西郷隆盛にも影響を与えました。 皆さんは、学んだことを生かせていますか？ 社外の講習会に参加しても、社内の階層研修にしても時間が経てば、人は学んだことを すぐ忘れるもんですよね。最近では、省スペース化の推進もあって紙資料を電子化し、処 分する方向にあるので、過去の講習・研修資料を書棚で見にすることさえなくなってきま した・・昔の社内のマネジメント研修資料を何年かぶりに開いてみると、結構いいこと書 いてありました・・やたら社内会議をやって、何も行動しないで課題解決をした気になっ ているのも、これに通ずるところがありますよね。反省です・・ 平洲先生の大切にしていた気持ちに「恕（じょ）」というものがあります。「恕」とは、 どんなことでもいつも相手の身になって考えるやさしさ（思いやり）のことで、自分さえ よければいいという考えは絶対にしない＝儀のこころだそうです。ご承知のように今年は 東日本大震災もあり、国内中がなんとなく「恕」の気持ちに包まれています。二百年も前 からこんなふうに、日本人のこころを汲み取った言葉があったのですね。職場でも「恕」 の気持ちをもってメンバーに接すれば、少しは連帯感も生まれるかな？・・個人個人がバ ラバラで、メンバー間の意思疎通や相互交流が不十分なとき、活力ある職場づくりを目指 すのに必要な精神かも・・ 平州記念館は、平洲先生が生まれた東海市荒尾町のひっそりした場所にあり、２Fに業 績や書画等の作品が中心に展示されています。また、１Fは郷土資料館となっており、市 内の遺跡から出土した考古資料や、むかしのくらしで使われた道具が展示されています。 次回は、同じ�螢僖好海任△蠅覆�ら関西地区で活躍されている 吉岡 裕嗣さんへ引き継が せて頂きますのでよろしくお願いします。 ■コラム ●執筆順番 2011年1月号 花村（国際）、河野（パスコ） 2月号 斉藤（パスコ）、福岡（パスコ） 3月号 片桐（中日本）、船田（パスコ） 5月号 洲濱（パスコ）、木村（パスコ） 6月号 新井（アジア）、鈴木（朝日） 7月号 六浦（パスコ）、白井（朝日） 8月号 下村（パスコ）、中村（アジア） 9月号 下境（パスコ）、小野（国際） 10月号 大久保（アジア）、内海（パスコ） 11月号 大津（パスコ）、村田（国際） ■コラム 「津波湛水域の空中写真判読」 3月11日の東日本大震災は未曾有の被害をもたらしました。航測各社が、災害協定によ り東北地域沿岸部の空中写真撮影を12日13日に実施したことはご承知のとおりです。撮 影成果には、津波が遡上して市街地を破壊した凄惨な光景がまざまざと見えるとともに、 海水が吐けきれず滞留している区域が随所に認められました。どうやら大規模な地盤沈降 が発生したようで、津波の湛水状況を至急判読すべしとの要請を受けたのが14日でした。 東京地区にいる私は、発注者と各社担当者を結ぶ連絡窓口を仰せつかりましたが、その 関係で業界内の技術陣の奮闘ぶりを垣間見ることができました。誰も経験したことのない 被害規模であり、大量の写真処理、被害様相が判明しないままでの判読項目の共通化に手 間取り、作業内容や作業量、作業完了時期は簡単には見通せませんでした。そもそも関東 地域も強震に見舞われており、各社の事務所施設やマンパワーも決して常態ではなかった と思います。一方で発注者からの依頼事項も時間を追う毎に変化し、また増大していきま した。そこにきて原発事故による計画停電が開始されたのがまさに14日ですから、判読技 術者にとっては苦難の山積みでありました。 当時の連絡メールをみると、「停電予定時間までには間に合うよう頑張ります」「停電 時刻です。睡眠します・・・」 「停電中でも携帯メールはOKですので、そちらに連絡を」 などとあります。自分達の使命を果たすべく工夫を凝らして作業を進める様子がみてとれ、 各社の技術者陣のたくましさや頼もしさを強く感じました。 未だ被害全容が見えない震災ですが、地理空間情報技術者が、災害の精緻な記録や分析 に、また復旧・復興への取り組みに大いに貢献するだろうことを確信しています。 （下村 博之：パスコ） ■コラム 【ゴシック建築の力学と、その診断に活用されている計測技術〜ＮＨＫのテレ ビ番組から〜】 アジア航測の中村です。普段は主に河川計画に関する業務に携わっています。業務の中 で様々な計測技術を活用していますが、つい最近、テレビで地上レーザーを利用して教会 建築物の診断をしている番組を見る機会があったので、その時の感想を述べたいと思いま す。 私は海外旅行に行くのが趣味で、ヨーロッパだけで小さな国を含めるとドイツ、フラン ス、モナコ、スイス、リヒテンシュタイン、イタリア、サンマリノ、バチカン市国、スペ イン、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ、オーストリア、ハンガリー、チェコの15ヶ 国を訪問しています。旅先での楽しみはなんといっても食事（＋ビール）と旧市街の散策 ですが、とにかくヨーロッパの旧市街は美しく、高さ100mを越えるような壮大な大聖堂や 塔･鐘楼から見渡す光景には感動を覚えます。ただし、歴史的構造物なのでエレベータが装 備されていることはほとんど無く、螺旋階段を時間をかけてのぼらなければなりません。 20〜30階建てのビルに相当する高さですので、相当の覚悟が必要です。今まで見た中では、 ドイツ・ケルンの大聖堂、イタリア・フィレンッツェの鐘楼、イタリア・ボローニャの斜 塔からの鳥瞰が印象に残っています。これまで、このような壮大な建築物をどのようにし て作ったのかと突き詰めて考えることは無かったのですが、先日テレビを見ていると、Ｎ ＨＫで「大聖堂〜ゴシック建築の科学〜」という番組をやっており、なぜ大聖堂のような 高い構造物を築く事ができたのかを実際に石を組み合わせながら解説していました。フラ ンスでは昔の技術をそのまま使って城を築くプロジェクトが、アメリカでは昔スペインで 解体された教会を復元するプロジェクトがそれぞれ実施されており、そこでの様子を紹介 しながら、大聖堂の構造を解説するという内容でした。高い構造物は、ゴシック建築の登 場により可能となり、その際いろいろな技術革新があったが、「尖頭アーチ」と「飛梁」 の登場が大きな部分を占めます。簡単に言うと、アーチを作る際、頂上付近をとがった形 状にすることで、応力を下方向に向けさせることができ、石材自体の重みで自立しやすい 構造としたことと、それでも残る横方向の応力については、それを支える飛梁という構造 体で支えるというものです。現在、我々が目にすることのできる大聖堂は、このような力 学的に絶妙なバランスを持った構造物であり、それゆえ天に向かって巨大な構造物を築く ことができたということです。 一方、この絶妙のバランスに乱れが生じると、倒壊の危険性が高まります。過去には実 際に倒壊した聖堂もあり、また現在倒壊の危険にさらされている聖堂もあるようです。こ こで地上レーザーを使った大聖堂の内部空間計測と３次元モデル構築の場面が登場し、職 業柄非常に興味を覚えるシーンでした。構築した３次元モデルをもとに、２本の柱の間隔 を計測すると、基部で11.6m、中部で11.5m、上部で11.7mと10〜20cm程度柱がたわんで いることが明らかになりました。このたわみは、アーチ部の応力に起因しており、飛梁の 設置位置が悪かったために、横方向の応力を抑え切れなかったようです。ただし、そのこ とに気付いた中世の人たちが補修工事を行い、適切な位置に飛梁を新設したため、なんと か持ちこたえていますが、壁にひび割れが確認されるなど、危険な状況は続いているよう です。ちなみに計測は、フランスのアミアン大聖堂を対象に、アメリカのヴァッサー大学 の研究者が行っていました。 土木構造物について、本格的な維持管理の時代に突入したといわれていますが、維持管 理には計測技術の出番が大いにあり、また計測したデータを分析・評価するコンサルティ ングについても重要性が増すと考えられます。様々な計測技術やデータ解析技術を駆使し てコンサルティングを行う、すなわち空間情報総括監理技術者としての出番もますます増 えてくるのではないかと考えさせられる番組の紹介でした。 （中村 明彦：アジア航測） ■ 空間情報関連便利グッズ / Webの紹介 （書籍紹介１） 小林茂・著：『外邦図−帝国日本のアジア地図−』、中公新書2119、860円(税別) 明治初期から第二次世界大戦終結まで、日本の陸軍などが中心となって作製したアジ ア・太平洋地域の地図（外邦図）についてまとめた新書です。地図作製にあたっての手段、 秘密測量や空中写真撮影などのことがよく書かれています。初期の頃（明治・大正）の陸 軍将校らによる偵察測量や越境した空撮など地図作製に知られていなかった一面も紹介さ れています。測量史という側面からある時代の測量技術を知ることができます。 （瀬戸島政博） （書籍紹介２） 津波災害−減災社会を築く 著者：河田惠昭 岩波新書 定価：本体720＋税 東日本大震災により、私たちの津波に対する意識の変化は極めて大きいものがあったが、 本書は、2010年12月に出版されている。大津波にどう備えるか。被害をいかに最小限に抑 えるかという減災の視点で具体的な施策が示されている。また、津波のメカニズムについ てもわかりやすく説明されており、津波災害に役立つ内容が盛りだくさんである。 復興構想会議でも示された河田哲学である「津波防災・減災論」を知るには、必読書では ないだろうか。 （林 義政：パスコ） （書籍紹介３） 「地震雑感/津波と地震」 寺田寅彦随筆選集 千葉俊二/細川光洋 編 中央文庫定価 476円+税 ISBN978-4-12-205511-7 「震災ハ忘レタル頃来ル」の格言を残し、夏目漱石の小説（我輩は猫である）に論文とモ デルが登場していることでも知られている寺田寅彦(1878-1935)は、明治から昭和にかけ て活躍した地球物理学者であり、自然科学系の随筆と多くの教えを世に残して科学の発展 に尽くした。関東大震災(1923.9.1)の被害分析では、地震そのものより、後の火災による 被害が甚大であったことを記している。倒壊しやすく、燃えやすく、火種を残した当時の 日本家屋は震災時には火災発生装置となると断言している。 また、調査の必要から徳川時代の大震火災の記録（1855.11.11安政の大地震など）を調 べているが、『今度われわれがなめたのと同じような経験を昔の人が疾（とう）になめ尽 くしている。それを忘却してしまって勝手なまねをしていたためにこんなことになったと 思う。』と警笛をならしている。平成の現代が江戸時代や大正年間の状態より安全である とはとてもいえない。地下にはガス管や通電中の配線があり、高層建築のガラスなどは震 災時には危険発生装置と化すことは明白である。先人の残した言葉や行動を見直すことで、 これから起こりうる事象に備えるためのヒントを得る一冊としたい。 （秋山 幸秀：朝日航洋） ＷＥＢの紹介： ＊ スコットランド王立古代歴史モニュメント委員会より発信されている、第二次世界大 戦中に撮影された偵察用空中写真で、特にヨーロッパのものがWebで提供されており、 Google Mapとリンクされ場所が特定できるのもうれしい。 （日本大学；田中 邦一） http://aerial.rcahms.gov.uk/worldwide/ ■測量協会イベント情報のお知らせ ○第23回地理空間情報イブニング・セミナー 電子基準点データを利用した地殻変動の把握 −東北大地震前後の関東・東北・北海道地域の地殻変動状況 講 師: 山口範洋 氏（清水建設(株)技術研究所高度空間技術センター主任研究員） 日 時 平成23年9月15日（木）16時〜17時30分 会 場 日本測量協会 研修室 参加費 会員は無料、非会員は2,000円 CPDポイント 測量CPDを1ポイント発行 募集人員 先着50名 詳しくは、http://www.jsurvey.jp/k-academy230915.pdf ○測量協会・公開講座 中国の測量地図作成の歴史 第4回テーマ 「元・明・清時代・・・・伊能図より100年進んでいた清の全国地図」 日 時 平成23年10月6日(水) 講義16:00〜17:00 質疑応答17:00〜17:30 講 師 今村遼平 氏（アジア航測（株）） 会 場 日本測量協会研修室 ※ 参加費: 無料 CPDポイント 測量CPDを1ポイント発行 募集人員 先着30名 詳しくは、http://www.jsurvey.jp/koukai231006.pdf （廿楽:測量協会） ■連絡事項（お祝い事） ＳＰ会会長の瀬戸島政博氏が平成23年度測量事業者功労賞を受賞されました。 国土交通省国土地理院は、平成23年度測量事業者関係者功労者を決定し、 瀬戸島政博氏(日本測量協会専務理事・SPの会会長)は多年にわたり測量業に従事し、測量 技術の健全な普及発達および測量・地図の品質管理に貢献した事が評価されました。 ■編集後記 この度、ＳＰの会会長の瀬戸島さんが、今年度の測量事業者功労賞を受賞されました。 心よりお祝い申し上げます。毎月、ＳＰ会の各支部の報告を掲載していますが、各支部活 動も活発になってきているのではないでしょうか。支部での会合は、会社を越えた技術者 間の交流の場として、貴重な場でもあると思います。 （編集委員長） ──────────────────────────────────────── All Rights Reserved, COPYRIGHT(c) Spatialist Club このメールマガジンを紹介したい方は各自の責任で転送しても結構です。 ──────────────────────────────────────── |
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